2005年 08月 15日
2005/8/15 『労働情報』 非正規労働の拡大に楔を!
|
「大学改革のフロントランナー」立命館大学における非正規労働者の闘い
ゼネラルユニオン副委員長 遠藤 礼子
現在,全労働者の非正規労働者は三人に一人と言われるが,立命館大学では二人に一人が非正規労働者である.今や立命館大学で過半数を占める非正規労働者の闘いを紹介する.
立命館大学には,期限のない「正規」「終身雇用」の教員と職員は,あわせて約二千人在籍している.一方,非正規の教職員は「非常勤講師 *1」が約千人,「常勤講師 *2」と「嘱託講師 *3」をあわせて約三百人,「契約職員 *4」約三百人,「アルバイト職員 *5」約百人,その他もろもろあわせて約二千人と,非正規と正規は同数である.あまりにもいろいろありすぎて,わけがわからないが,さらにこれ以外にも,大学の子会社であるクレオテックからの派遣や,クレオテックなどへの業務委託,孫受け会社への業務委託など,直接雇用でない労働者も多い.
ゼネラルユニオンは大阪に事務所を置く多国籍労組であり,組合員の大半は英語ネイティブの英語講師だが,日本人の講師や職員も多い.私自身は,立命館大学他でイタリア語の非常勤講師をしており,大学非常勤講師の労働運動に関わっていたが,縁あってゼネラルユニオンに二〇〇三年末に加盟した.二〇〇三年はちょうど雇用年数に四年の上限が定められている常勤講師の雇用問題が争点となっていたが,これは組合員三名への特別ケアという形で解決した.
二〇〇四年度も,立命館では,年末に私自身を含む数多くの非常勤講師の不当な減ゴマや,学生相談室のカウンセラーを全員解雇の上「公募」と称するイカサマ面接を行った証拠となる秘密メモが発見されるなど,トラブルが絶えなかった.しかしこの年は,期限を迎える組合員がいなかったため,雇用年数制限の問題が火を吹くことはなかった.しかし,二〇〇五年度末に,雇用年数上限の年を迎える組合員は多数いた.
二〇〇五年一月と五月に「労基法と労組法遵守・組合事務所・新採オリエンテーションでの組合の紹介・雇用保険・更新年限撤回」などを要求して団交を行ったが,回答はすべてNOだった.更新年限撤回に関しては,団交の席で,雇用年数に上限があるのは「三年四年以上働いたら,期限のない雇用に転化する危険がある」ためだとも明言した.
支部の活動は,まず,立命館支部のニュースの配布しようということで,団交に先立って,五月に,英語二ページ+日本語二ページの支部ニュースを作成し,約二五〇〇部を組合員が手分けして講師のメールボックスや事務室の職員に配布した.続いて六月二四日金曜日の朝,組合員六名が大学正門前でビラまきを行った.ビラまきには総務部次長以下数名の職員が監視に来ていたが,特にトラブルもなかった.
しかし,その日の夕方,大学から組合本部に「今朝のビラまきの件で,今まで対策会議を開いてた.ゼネラルユニオンへの抗議文を出すことにした」という電話があったあたりから当局の動揺が見えてきた.そして,その日の夜,ビラまきに参加した組合員二名の自宅に,上司にあたる教授から電話による脅しがあった.「このような行動を続けるなら,あなたの来年の契約更新の支援はもう出来ない.立命でトラブルを起こせば,他の大学で仕事を見つけることも困難だろう」.
さらに,その週末のオープンキャンパスで,組合員十名が二回目のビラまきを行い,また,引き続き,水曜日には三回目のビラまきを,滋賀のキャンパスでも行った.
その後ビラまきに参加した組合員二名に,さらに,別の教授から脅しがあった.「貴方が大学の名誉を毀損した事で,大学は四月に更新しない理由にするかもしれない」
このように相次ぐ不当労働行為に対して,七月八日,大阪府労働委員会への申し立てを行い,またあわせて,労基法違反=就業規則の未整備の刑事告発も行った.また,同日,記者会見を行い,その内容は多くの新聞テレビで取り上げられた.
労働委員会は八月五日に第一回調査が予定されているが,大学の用意した答弁書には「棄却を求める.被申立人の主張については追って書面で答弁する」とだけあって,答弁書すら用意できていない.一方,使用者からの脅しや脱退工作にもかかわらず,立命館大学支部の組合員は減るどころか激増している.大学は夏休みに入ったため,争議は「休戦中」だが,休み明けには,更に大きなアクションが続く.
大学は特殊な職場ではあるが,そこにある労働問題は特殊なものではなく,どこにでもある問題だ.立命館大学は,労働者の使い捨ての拡大こそが先進的な改革であると本気で信じているようだが,この時流は,しかし,大学だけの問題でも,日本だけの問題でもない.不安定労働は世界中で急速に拡大している.今,ここで,ひとりひとりの不安定労働者自身が立ち上がることこそが,この地球規模の時流に対抗できる手段だ.
今後の闘いに連帯とご支援を!
ゼネラルユニオン立命館大学支部のニュースや不当労働行為救済申立書は,http://www.generalunion.org/rits.htm でご覧になれます.
*1 非常勤講師はコマ単位の1年契約で,通常一校で二~五コマ担当.あちこち掛け持ちして週十コマ担当しても,年収三百万円.私学共済などへの加入を多くの大学が拒否しているため,ここから国民健康保険と国民年金を捻出.年数の上限はないので「うまくいけば」何年でも働ける.
*2 常勤講師はフルタイムの三年契約.ただし契約書は一年契約の二回更新という形式,かつ,その三年間のあとに,オマケでもう一年というのが慣習化していて,実質四年契約.年収約六五〇万円.ほぼ全員が外国人の語学教員.四年たてば自動的にクビ.
*3 嘱託講師はフルタイムの五年契約.ただし契約書は一年契約の四回更新という形式.年収四二〇万円.外国人が大半だが日本人もいる.語学教員.五年たてば自動的にクビ.
*4 契約職員はフルタイムの三年契約.ただし契約書は一年契約の二回更新という形式.事務職員の多くがこの契約職員で,一年目は仕事がわからない,二年目に慣れてきても,三年目は「どうせ来年はここにはいない」ので真面目に働く気もしない.年収約二三〇万円.三年たてば自動的にクビだが,一部はクレオテックからの派遣として再雇用されている.
*5 アルバイト職員はフルタイムの十一ヶ月契約.八月は仕事も給料もない.更に二回更新までという年数制限さえついている.時給八百円.
『労働情報677・8号』掲載
ゼネラルユニオン副委員長 遠藤 礼子
現在,全労働者の非正規労働者は三人に一人と言われるが,立命館大学では二人に一人が非正規労働者である.今や立命館大学で過半数を占める非正規労働者の闘いを紹介する.
立命館大学には,期限のない「正規」「終身雇用」の教員と職員は,あわせて約二千人在籍している.一方,非正規の教職員は「非常勤講師 *1」が約千人,「常勤講師 *2」と「嘱託講師 *3」をあわせて約三百人,「契約職員 *4」約三百人,「アルバイト職員 *5」約百人,その他もろもろあわせて約二千人と,非正規と正規は同数である.あまりにもいろいろありすぎて,わけがわからないが,さらにこれ以外にも,大学の子会社であるクレオテックからの派遣や,クレオテックなどへの業務委託,孫受け会社への業務委託など,直接雇用でない労働者も多い.
ゼネラルユニオンは大阪に事務所を置く多国籍労組であり,組合員の大半は英語ネイティブの英語講師だが,日本人の講師や職員も多い.私自身は,立命館大学他でイタリア語の非常勤講師をしており,大学非常勤講師の労働運動に関わっていたが,縁あってゼネラルユニオンに二〇〇三年末に加盟した.二〇〇三年はちょうど雇用年数に四年の上限が定められている常勤講師の雇用問題が争点となっていたが,これは組合員三名への特別ケアという形で解決した.
二〇〇四年度も,立命館では,年末に私自身を含む数多くの非常勤講師の不当な減ゴマや,学生相談室のカウンセラーを全員解雇の上「公募」と称するイカサマ面接を行った証拠となる秘密メモが発見されるなど,トラブルが絶えなかった.しかしこの年は,期限を迎える組合員がいなかったため,雇用年数制限の問題が火を吹くことはなかった.しかし,二〇〇五年度末に,雇用年数上限の年を迎える組合員は多数いた.
二〇〇五年一月と五月に「労基法と労組法遵守・組合事務所・新採オリエンテーションでの組合の紹介・雇用保険・更新年限撤回」などを要求して団交を行ったが,回答はすべてNOだった.更新年限撤回に関しては,団交の席で,雇用年数に上限があるのは「三年四年以上働いたら,期限のない雇用に転化する危険がある」ためだとも明言した.
支部の活動は,まず,立命館支部のニュースの配布しようということで,団交に先立って,五月に,英語二ページ+日本語二ページの支部ニュースを作成し,約二五〇〇部を組合員が手分けして講師のメールボックスや事務室の職員に配布した.続いて六月二四日金曜日の朝,組合員六名が大学正門前でビラまきを行った.ビラまきには総務部次長以下数名の職員が監視に来ていたが,特にトラブルもなかった.
しかし,その日の夕方,大学から組合本部に「今朝のビラまきの件で,今まで対策会議を開いてた.ゼネラルユニオンへの抗議文を出すことにした」という電話があったあたりから当局の動揺が見えてきた.そして,その日の夜,ビラまきに参加した組合員二名の自宅に,上司にあたる教授から電話による脅しがあった.「このような行動を続けるなら,あなたの来年の契約更新の支援はもう出来ない.立命でトラブルを起こせば,他の大学で仕事を見つけることも困難だろう」.
さらに,その週末のオープンキャンパスで,組合員十名が二回目のビラまきを行い,また,引き続き,水曜日には三回目のビラまきを,滋賀のキャンパスでも行った.
その後ビラまきに参加した組合員二名に,さらに,別の教授から脅しがあった.「貴方が大学の名誉を毀損した事で,大学は四月に更新しない理由にするかもしれない」
このように相次ぐ不当労働行為に対して,七月八日,大阪府労働委員会への申し立てを行い,またあわせて,労基法違反=就業規則の未整備の刑事告発も行った.また,同日,記者会見を行い,その内容は多くの新聞テレビで取り上げられた.
労働委員会は八月五日に第一回調査が予定されているが,大学の用意した答弁書には「棄却を求める.被申立人の主張については追って書面で答弁する」とだけあって,答弁書すら用意できていない.一方,使用者からの脅しや脱退工作にもかかわらず,立命館大学支部の組合員は減るどころか激増している.大学は夏休みに入ったため,争議は「休戦中」だが,休み明けには,更に大きなアクションが続く.
大学は特殊な職場ではあるが,そこにある労働問題は特殊なものではなく,どこにでもある問題だ.立命館大学は,労働者の使い捨ての拡大こそが先進的な改革であると本気で信じているようだが,この時流は,しかし,大学だけの問題でも,日本だけの問題でもない.不安定労働は世界中で急速に拡大している.今,ここで,ひとりひとりの不安定労働者自身が立ち上がることこそが,この地球規模の時流に対抗できる手段だ.
今後の闘いに連帯とご支援を!
ゼネラルユニオン立命館大学支部のニュースや不当労働行為救済申立書は,http://www.generalunion.org/rits.htm でご覧になれます.
*1 非常勤講師はコマ単位の1年契約で,通常一校で二~五コマ担当.あちこち掛け持ちして週十コマ担当しても,年収三百万円.私学共済などへの加入を多くの大学が拒否しているため,ここから国民健康保険と国民年金を捻出.年数の上限はないので「うまくいけば」何年でも働ける.
*2 常勤講師はフルタイムの三年契約.ただし契約書は一年契約の二回更新という形式,かつ,その三年間のあとに,オマケでもう一年というのが慣習化していて,実質四年契約.年収約六五〇万円.ほぼ全員が外国人の語学教員.四年たてば自動的にクビ.
*3 嘱託講師はフルタイムの五年契約.ただし契約書は一年契約の四回更新という形式.年収四二〇万円.外国人が大半だが日本人もいる.語学教員.五年たてば自動的にクビ.
*4 契約職員はフルタイムの三年契約.ただし契約書は一年契約の二回更新という形式.事務職員の多くがこの契約職員で,一年目は仕事がわからない,二年目に慣れてきても,三年目は「どうせ来年はここにはいない」ので真面目に働く気もしない.年収約二三〇万円.三年たてば自動的にクビだが,一部はクレオテックからの派遣として再雇用されている.
*5 アルバイト職員はフルタイムの十一ヶ月契約.八月は仕事も給料もない.更に二回更新までという年数制限さえついている.時給八百円.
『労働情報677・8号』掲載
by gurits
| 2005-08-15 00:00
| マスコミ・メディア

